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「デスパッチン」第1話~第5話(シノプシス)

●第1話「指」

※注 「たけくまメモ」で発表したシナリオでは虎見の逮捕容疑が「万引き」になってましたが、これをカッターナイフ携帯所持による「銃刀法違反」に変えました。

 夏。蝉時雨が耳をつんざく昼下がりの公園。そこに隣接した東京・I署の取調室で、巡査と少年が机を挟んで座っている。少年は数時間前に路上で職質を受け、カバンからカッターナイフが出てきたため銃刀法違反で現行犯逮捕されたのだ。本来その程度のことで署に連行することはないが、少年は名を名乗ろうとせず、態度があまりにも不遜だったので懲戒の意味で逮捕連行されたものである。
 数時間経っても、少年は不敵に微笑を浮かべるのみで、名乗ろうとはしない。苛立った取調の巡査が声を荒げると、少年は指をパチンと鳴らし、「今、お巡りさんの奥さんが死んだよ」ととんでもないことを口走る。
 初めは口から出任せだと思っていた巡査も、部屋に入ってきた同僚がなにごとか耳打ちしたのを聞いて、青ざめる。本当に、そのとき妻が飛び降り自殺していたのだ。パニックになった巡査、妻が運ばれた病院へと向かう。
 翌日。葬儀の手配を済ませた巡査が、署に戻って再び少年と対峙する。少年はなぜ妻の自殺を知っていたのか。気になってしかたがないのだ。しかし少年の態度は相変わらず、巡査をせせら笑うのみ。巡査はかっとして少年につかみかかる。と、彼がまた指を鳴らし、今度は巡査の母親が電車に飛び込んだという。果たしてその直後、I署に池袋駅で老婦人が飛び込み自殺したとの報告が入る。間違いなく、それは巡査の母親だった。
 巡査、半狂乱になる。青筋が浮いた大きな手で、少年の首を絞めようとする。すると少年が、中学生になる巡査の娘の存在を口走る。そしてこのまま自分を釈放するなら、娘の身には何も起きないだろうと囁く。うなだれる巡査。
 少年、ipodを聞きながら、蝉時雨の公園をどこかに歩いていく。

●第2話「蝙蝠」

 豪華な家具が配された、西洋風の屋敷。書斎らしき部屋。年代物の大きな机に座った、七十歳くらいの白髪に髭の老人が、ノートパソコンに向かってキーボードを叩いている。老人が覗いている画面は、「2ちゃんねる」風の掲示板。そこに「最近飛び込み自殺が多くありません?」というスレッドがあり、彼はそのスレッドで「守護神」と名乗るハンドルの人物に「蝙蝠」という名前で「そこんとこ、もっと情報キボンヌ」というレスを書いているのだ。
 老人、ノートパソコンを閉じると、二階に行き、一番角部屋の主に語りかける。「新人さま…」
 呼びかけられた少年は古森新人(こもり・にいと)である。黒髪が似合う美少年だ。十八歳。古森財閥の跡取りで、幼い頃両親と死別。老人は執事の寶塔嘉次郎(ほうとう・かじろう)。古森は彼に育てられた。中学の途中から不登校で、今は一日中屋敷に引き籠もりで、パソコンが友達である。
 古森は両腕に包帯を巻いて、自分のパソコンの前に座っている。「坊ちゃま。包帯をお取り替えしましょう」と、寶塔が言い、包帯を解いて薬を塗る。「パソコンが打ちたいよ」と古森が言うと、「今しばらく、我慢なされませ。腱鞘炎は最初の数日が肝心でございます」と寶塔が言って、代わりにパソコンを立ち上げる。
「坊ちゃまのお指図どおりにレスを付けておきました」と、スレッドを開く。
 古森が不機嫌な顔になる。
寶塔「どうかなされましたか? この文面でなにか不都合が?」
古森 「寶塔。“キボンヌ”は古いぞ。恥ずかしいじゃないか」
寶塔「どのように書けばよろしかったと?」
古森 「そこんとこ“kwsk”だ」
寶塔「は?」
古森 「“くわしく教えてくれ”という意味で“kwsk”と書くんだ。情報キボンヌなんて、五十過ぎのオヤジが書く文面だぞ。僕はまだ十八だ」
寶塔「以後、気をつけます」
古森 「ところで寶塔。この“守護神”ってやつのこと、どう思う?」
寶塔「軽い調子の文面ですが、頭はよさそうですな」
古森「こいつ、一ヶ月前から俺にやたらと話しかけてくる。俺が別スレに“名無し”で書いても、必ず“守護神”がレスをつけてくるんだ」
寶塔「気味悪いですな」
古森「この“自殺が多い”ってスレッドは僕が立てたんだが……」
寶塔「最近は本当に多いですからな」
古森「僕が最近の一連の飛び込み自殺には、なにか関連があると書いたら、さっそくこいつが反応してきたよ。なぜか警官の家族が多いんだよ。今年になってから都内では16件も警官の家族が自殺で死んでいる。16件もだよ? 特に池袋で起きたデパートの人妻飛び降りと駅でホームから老婆が飛び込んだ事件。あれ、両方ともある警官の姓と同じなんだ」
寶塔「ほう。偶然ですな」
古森「そうかな? 両方、同じ“小林”なんだが」
寶塔「しかし、珍しい名字ではありませんな」
古森「ところが、たまたまT区役所から流出した名簿に検索かけてみたら、二人の名前があってね。住所も同じだった」
寶塔「ということは、やはり家族……」
古森「そう思って、俺が疑問を書いたら、“守護神”がさ、死んだ若い方が警官の奥さんで、年くったほうが母親だと書いてきた。新聞に書いてあったっていうんだが、僕は見ていない。それでI署のデータベースに潜り込んだら、これがドンピシャリでね」
寶塔「坊ちゃま。あれほどハッキングはお止めなさいと……」
古森「悪い悪い。それで、詳しく教えてくれってレスをさっき打ってもらったわけだよ。というわけで、リロードしてくれないか」
 寶塔が掲示板をリロードする。スレッドの一番最後に、“守護神”のレスがついていた。
古森「ほーら。早いんだよこいつ。まるで一日中、ネットで僕をマークしてるみたいだ」
 “守護神”のレスには、I署の小林京一巡査の名前が書かれていた。
古森「うん。僕が調べた警官の名前も小林京一だ。間違いない」
寶塔「新聞に書いてあったのでしょう」
古森「どの新聞にも、若い小林さんの夫と、年取った小林さんの息子が同一人物だとわかる書かれ方はしてないんだ。間違いない。この“守護神”ってやつ、正体は警官だよ。この掲示板は匿名が売りだけど、警察が令状とれば簡単にIPを教えるからね。守護神は、IPから僕の足跡を追ってるんだろう。ま、僕もそれを承知でわざと同一IPの“串”を使ってるんだけどね。ロシア政府の“串”だけど」
寶塔「どんな意図で“守護神”が坊ちゃまを追っているのか……」
古森「想像はつくけど。こないだ政府のサーバーに感染したウィルスは僕が作ったと疑ってるんだろ。僕はそんなことしないのに」
寶塔「警察上層部に知人がおります。どんな奴なのか、調べてみましょう」
古森「頼む」

 場面かわって、警視庁の分室である。ドア横に「サイバーテロ警戒本部」の看板がかかっている。二十代後半くらいの女性が、パソコンの前で“蝙蝠”を監視している。「太刀華さん。時間です」と、若い刑事が交代に来る。太刀華と呼ばれた女性刑事、ロッカーで革ジャケットに着替え、唇にルージュを引く。ヘルメットをかぶり、大型バイクで夜の町へと繰り出す。
 北東大学病院の駐車場にバイクを停める。途中で買ったのか、手には花束が握られている。そのまま脳外科の病棟に歩いていく。ある病室に入り、点滴を打たれ、人工呼吸器をつけて、頭に包帯が巻かれた男性のベッドの前で歩みを止める。
「一幸さん、来たわよ」
 男性に反応はない。昏々と眠っている。
 太刀華冷子は眠る男にほほえみかけると、花瓶の花を取り替える。
「あれから一年よ、一幸さん。私、サイバー捜査科に飛ばされたけど、この仕事もやってみたら面白かったわ。少なくとも、撃たれる心配はない。今、古森新人って少年を調べているの。面白い子よ」
 冷子、眠る一幸の顔をじっと見つめる。
「安心して。私、結婚しないから。誰とも…」


●第3話「念視」

 一話の少年(虎見心)が半裸でベッドに寝ている。彼は東京湾沿いの高層マンションで一人暮らしだ。携帯が鳴る。虎見、メールを見る。
〈今朝、五十万振り込んでおきました。御厨〉という文面である。
 虎見、メールを一瞥すると、ベッドから起きあがる。家具のない、殺風景な部屋である。窓には厚いカーテンがかかっていて部屋はうす暗い。壁に姿見が立てかけてある。ところが上半分が割れていて、下半身しか映らない。洗面所で顔を洗う。洗面台の鏡も、粉々に砕けている。

 虎見は外出するが、人相の悪い三人組の男に拉致され、山奥のダム湖に沈められそうになる。男たちはヤクザだが、命令で虎見を殺そうとしているだけで、虎見がなぜ殺されようとしているのか、その理由を知らない。反対に虎見が男たちに「理由」の説明を始める。
 虎見には、一種のテレパシー能力があること。その能力で、目の前の相手が「一番大切に想っている人」を見抜くことができること。「想い人」は、まるで背後霊のように、その者の背後に浮かんで見えるのである。生きている人ははっきり見え、すでに死んでいる者はぼんやりと白黒で見える。そして、自分は「想い人」を自殺させる能力があるのだと説明する。
 そして虎見はヤクザ三人のうち、二人が同性愛関係にあることをすでに見抜いていた。指をパチリと鳴らすと、お互いに想い合っていた二人は、その場でともに自殺する。残った一人を、今度は虎見が脅して、組長の家まで案内させる。
 虎見は、組長に一人娘がいることを知り、組長を脅して真相を聞き出す。組長は、窪田という有力政治家の命令だと告白する。虎見を非合法的手段で極秘処分するために、政治が動き出していることを虎見は知る。
 そのとき、組長の自宅に何も知らない娘が帰ってくる。その中学生の娘を「念視」する虎見。組長の背後には娘の姿がはっきり見えるが、娘の背後に死んだ母親は見えても、父の姿はない。
 しかし組長は、娘かわいさのあまり、今後虎見に手を出さないことを約束する。


●第4話「孤独」

 民民党の大物代議士・窪田が自殺した。その直前に窪田の妻が自殺しており、その後追い自殺で、発作的なものだと報道された。ワイドショーでも一時話題になったが、事件性はないとして、すぐ話題も下火になった。
 だが、警察は密かに動き始めていた。警視総監の御手洗は幹部を召集し、「デスパッチン極秘特別捜査本部」を発足させる。本部長には、刑事部長の寝屋川が就任した。寝屋川が選抜したスタッフの中には太刀華冷子もいた。
 すでに登別首相の指示が出ていた。目標は虎見心の能力の解明と、この政治利用が可能かを研究すること。利用不可能と判断されたときは、すみやかに虎見を抹殺すること。暗殺者は超法規的措置で救済され、罪には問われない。ただし、国民には露見しないよう、すべて極秘裏におこなわなければならない。
 当面は虎見の能力を研究しなければならない。それには虎見に接触しなければならないが、誰がその危険な役目を行うのか。
 すでに警察内部は、虎見の「能力」の噂で持ちきりだった。当然、誰一人として彼に接触したがる者はいない。寝屋川は、沈着冷静で職務遂行能力が高く、そして「身よりのない者」を探せと冷子に命じる。冷子自身も、植物人間状態の恋人がいる以上、虎見と接触するわけにはいかない。
 が、冷子には心当たりがあった。サイバー科で内偵していた、スーパーハッカーの古森新人である。古森は虎見とほぼ同い年で、民間人でありながら「警官家族連続自殺事件」の存在に気がつくほど知性が高い。なにより古森には身寄りがない。
 冷子は、古森に会い、デスパッチンへの捜査協力を要請する。冷子から連続自殺事件の張本人である虎見の話を聞き、古森は興味をひかれる。なにより虎見には、自分と似た孤独の影があった。
 古森は、冷子から虎見の携帯メールアドレスを聞き出す。


●第5話「罠」

 虎見は自分の携帯アドレスに届いた「古森」からのメールに興味を惹かれた。そこには、「●●●●●●●●●●?」とあった。

※古森が虎見に接触を図る方法は熟考の要あり。ポイントは虎見がひた隠しに隠していた事実を古森が指摘する展開が望ましい。必然的に、虎見が古森に会いたくなるようにし向けねばならない。

 お台場の大観覧車のカプセル内で、古森と虎見は出会う。視界全体に東京湾が見える。古森も虎見も、黙ってお互いを見つめる。虎見の額には、うっすら汗が滲んでいる。
 古森の背後に、誰の姿も見えないからである。
(こんな奴は初めてだ…)と、虎見は思う。
(誰の顔も見えない……。こいつ……本当に孤独なのか……)
 古森が、口を開く。
古森「僕、思うんだけど、さ」
 観覧車が最上部にさしかかる。水平線が丸みを帯びて見える。
古森「人はみな、罠に落ちていると思うんだよ。どんなにあがいても、そこから逃れられないんだ……僕も、君もね」
 眼下にお台場の行楽客が豆粒のように見える。
古森「あの人たちも……。虎見君、何を見ているんだい?」
 虎見は、古森の背後に、何かモヤのようなものがかかっているのを見ている。それは人間のようでも、動物のようでもある。
古森「どうやら君は、直接僕を殺すことが、できないようだね」
 古森、ジャケットをめくって、拳銃のホルダーを見せる。
古森「僕は、これで君が殺せるよ。しかも、罪にならないんだ。僕には国家がついてるから……。
虎見「……」
古森「でも、殺さない。今、君を殺してしまったら、何のために君がこの世に存在するのか、わからなくなるからね。
虎見「……」
古森「僕の存在も、さ」
 古森の背後のモヤが、だんだん人のかたちになっていく。
古森「どうせ罠に落ちるなら……」
 ぼんやりと背後の“顔”が焦点を結んでくる。
(いいぞ……早く顔を見せろ)と、虎見は思う。(これで立場は逆転だ。)
古森「ともに落ちようじゃないか。同じ罠に……」
 虎見、凍り付いて目を見開く。虎見の目には、今こそ古森の背後の“顔”がハッキリと見える。だが、虎見には手が出せない。
 古森の背後に見える“顔”は、自分……虎見心、だったからだ。

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コメント (1)

めたろう:

古森が虎見を圧倒しているのが良いですね。
器において虎見の能力を上回る訳で、
古森を中心に回る話になってゆくのでしょうね。

接触のキーになる「事実」は順当に行けば、
鏡を嫌う理由や、
彼自身の想い人(おそらく肉親)、
一族の能力、所在等の情報か。
あるいは「情報を持っている」偽装で
虎見を嵌めるのかも。

以前に「たけくまメモ」で出ていた内容をおさらいしに行って来ます。

五話のキメ台詞、使ってみたいものよ、、、、。

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